★会社の登記の注意点★

 会社の登記と一言でいっても、会社を設立する際の登記、取締役等会社の役員を変更する際の登記等、それぞれの手続において様々な注意点があります。
 株主総会の決議要件は充たしているか、登記手続上必要となる実印等が押印されているか等、例を挙げれば切りがありません。
 その中で最も注意を要するものの一つが、「官報」という掲載紙に、変更等すべき事項の公告掲載が義務付けられている手続です。

★会社の公告は、法律上の義務なのに・・★

 この「官報」という言葉ですが、会社を設立した事がある人であれば、一度は目にした事があると思われます。
 会社の登記簿を見れば、大半の会社が「公告をする方法」として登記している「官報」です。
 一般の方にはこの「官報」は、馴染みがないため会社の手続にはあまり関係がないと思われるかもしれません。
 ところが、会社法の規定には、株式会社であれば、1年に1回は会社が定めた公告方法に、株式会社の最終の貸借対照表(大会社であれば損益計算書も必要です。)を開示しなさいと決められています(いわゆる決算公告と呼ばれるものです。)。
 しかしながら、実際はこの決算公告をしている株式会社は、ほんの一部です(実際、弊社が関わったほとんどの株式会社が公告しておりません・・。また、この公告を怠った場合、「100万円以下の過料・・」という罰則まであります。ただ、過料を科されたという話は聞いたことがありませんが・・。)。

★官報は掲載費用が安い★

 では、公告をする掲載紙が色々ある中で、何故、「官報」を公告方法として定めている会社が多いのでしょうか?
 結論から言いますと・・、掲載費用が安い!これに尽きます。
(公告方法を「官報」とすることについては、会社を作る時に司法書士に言われたので、理由もわからず、ただ何となくという方が大半ではないでしょうか。)
 ある新聞を例に挙げると、一番安い掲載枠でも約50万円なのに対し、官報では、掲載内容にもよりますが、その約5分の1位の費用でほとんどの掲載が可能です。

★結局、官報が便利?★

 自社でホームページ等を作成できる会社であれば、決算公告をホームページ等に掲載する事が認められています。
 この場合は、「わざわざ官報に掲載しなくても・・」と思われるかもしれませんが、この方法はあまり一般的ではありません。
 その理由ですが、法律上、決算公告の方法を「官報」や「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙(日本経済新聞、朝日新聞等の事です。)に掲載する場合であれば、貸借対照表(大会社であれば貸借対照表及び損益計算書)の要旨でよいとされています。
 ところが、ホームページ等に決算内容を開示する場合は、要旨だけでは足りず、注記も開示が必要とされているため、結局は、公告方法を「官報」とし、その結果、決算公告は必要に応じて行うという事になっているのが現状です。

★官報公告の申込時期に注意★

 話は戻りますが、「官報」に掲載をする事が会社法上定められている手続事項は、資本金の額の減少(減資)、合併、組織変更、解散等色々あります。
 その掲載内容は、単に会社の解散の様に「会社が解散するので・・」といった内容を掲載すればよいものや、会社の直近の最終の貸借対照表の開示状況を合わせて掲載する必要があるものもあります。
 この開示状況の掲載事項ですが、会社が定めた公告方法に従って行われた決算公告を掲載した「掲載紙」「掲載の日付」「掲載頁」が通常は掲載事項とされています(ホームページ等の場合には、当該掲載場所のURLを記載します。)。
 ただ、決算公告を行っていないために前記に挙げた手続を行うことが出来ないという事が無いように、その場合には、当該公告(例えば、合併公告)の際に、直近の最終の貸借対照表の要旨
(会社の規模等によっては、損益計算書の要旨も必要となる場合がありますが)を合わせて掲載すればよい事とされています(なお、会社の種類によっては、そもそも決算公告を義務付けられていない会社(特例有限会社、合同会社等)もありますので、その場合は、開示する必要はありません。)。
 そして、ここで手続上問題となるのが公告掲載の申込と掲載日までの日数です。
 直近の最終の貸借対照表の要旨を掲載する必要がない場合(既に決算公告をしている会社)は、掲載希望日の約1週間前が申込期日なのに対し、直近の最終の貸借対照表の要旨を一緒に掲載する場合(決算公告をしていない場合)は、掲載希望日の約2週間前が申込期日となり、決算公告をしている場合に比べ日数がかかってしまう事です。
 この申込期日を過ぎると当初のスケジュールの掲載予定日に掲載する事が出来なくなりますので、特に注意が必要です。

★場合によっては、ディールそのものがリスケになります★

 合併を例にとりますと、官報が登記の添付書類となっており、かつ、官報公告掲載後、1か月の掲載期間を経過している必要があります。
 万が一、この掲載期間を満たす事が出来なかった場合には、合併そのものの手続きを当初の想定スケジュールで行う事が出来なくなります。
 (つまり登記のスケジュールも狂ってくるということです。)
 弊社の過去のケースでは、そもそも、官報公告に最終の貸借対照表の開示状況を掲載する必要がある事をお客様が把握されておらず、ディールのスケジュールをリスケせざるをえなくなったという例もありました。
 急に合併等の手続を進める事となったので、スケジュールを作成したところ、公告の申込期日が既に過ぎていた・・・なんて事の無いように、スケジュール作成に当たっては、専門家と協議のうえ、進められる事をお勧め致します。


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