★未登記?建物発見★

 お客様から稀に「未登記の建物が判明したので登記をしたい」というお話をいただくことがあります。
 しかし、一言で「未登記」といっても、その状況は様々で登記ができるのにしていない「未登記」もあれば、登記ができないので「未登記」という建物もあります。
 後者の登記ができない建物が発生する理由ですが、これは登記法における建物の定義と関係があります。

★民法が認める建物とは★

 まず、私法の基盤となる民法は何といっているかというと、「建物とはこういうものだ」という明確な定義はしていません。
 しかし、過去の判例では、
 「土地に定着し、建物の目的から見て使用に適する構造部分を具備すれば建物ということができる」
 としています。
 つまり、100%完成していなくても、住宅などでない限り、屋根及び囲壁ができれば、床や天井がなくても建物として認められるということです。

★登記法が認める建物とは★

 これに対し登記法では、建物として登記をするためには以下の要件を備えなければならないとしています。

  @土地の定着物であること(定着性)
  A屋根及び周壁又はこれらに類するものを
   有すること(外気分断性)
  Bその目的とする用途に供しえる状態にある
   こと(用途性)

 まず、@の定着性ですが、単に物理的に土地に定着しているという事由のみで判断されるのではなく、それに加えその当該建物の社会取引通念上、当該土地に永続的に使用するであろうという状態で建築されていることが要求されます。
→例えば、簡易な守衛室や物置等は、確かに土地には定着していますが、移築しようと思えば簡単に移築できる状態であれば、「定着性なし」ということで登記対象外になる可能性があります。
 他にも、機械上に建設した建造物や容易に運搬できる切符売場等も上記と同じ理由で登記対象外となります。
 次にAの外気遮断性ですが、これは端的に表現すれば「壁と屋根」が必要ということを意味します。
 屋根についてはあまり疑義が生じませんが、壁についてはどの程度の堅牢性が必要かは、当該建物の用途である程度前後しますが、少なくとも外気を遮断できる構造であることが必要とされています。

 よって、建物の用途上で問題がないといっても、例えば金網のフェンス等は、登記上の外壁とは認められません。
→立体駐車場などの外壁は通気性のある鉄板を用いているものもあります。
 こちらについては関係法令等の制約のためそのような外壁になっているということも多いため、ケースバイケースではありますが外気分断性が完全でなくても建物として登記をすることができるケースもあります。
 また、以上の基準に照らすと下記のものは建物として登記ができません。

 ・アーケード付街路
 ・ガソリンスタンドのキャノピー部分(キノコ型の屋根の部分です。)

 最後はBの用途性です。
 これは、建物として認められるためには、当該建造物がその目的とする用途に見合った一定規模の生活空間が確保されている必要があることを意味します。
 換言すると、機械室のように、外観上は建物の呈があっても、人が当該建造物を建物として利用することができないときは、建物として認められません。
 他にもガスタンク、石油タンク等も同様に、そのタンクの中に人が入って建物として利用するということはできませんので、建物として登記することはできません。
 (ただ、こちらも先の立体駐車場と同じくケースバイケースといえます。→飼料用・セメント貯蔵用サイロは通達により建物として登記が可能です。)
 以上が登記上、建物に要求される基準です。
 ただこの基準はあくまで登記法上の基準であり、課税上の建物認定基準とは異なりますので注意が必要です。
 (どちらかというと、課税上の認定基準の方が登記上の認定基準よりも緩い傾向にあるようです。)
 以上から明らかなように、民法上は建物として認めることができても、前記の登記法が要求する建物要件をみたさないと、登記はできないということになります。
 (民法も不動産登記法も同じ民事法に属する法律なのに、おかしな気はしますが・・・・)
 先述のタンクなどは、登記が認められない代表格ですが、実際にある建物が登記可能かどうかということは微妙な判断を要求されるケースもありますので、そのような場合は、土地家屋調査士等の専門家に建物をチェックしてもらう事をおすすめ致します。


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